■■■■■■主要人物ぷろふぃーる■■■■■■
・ほっぺこちゃん:わやわやハウスに通う、5歳の女の子。カバンの中にいれているもの、ティッシュ、人形、人形用のミルクの素、アメの包み紙、ペン数本、メモ帳、薬(折り紙をちぎったもの)
・パパ:ほっぺこちゃんのことが大好きな、ほっぺこちゃんのパパ。ときどき透明になって、わやわやハウスにこっそり通う。
・にょろにょろさん:わやわやハウスの保育者。いまのところ、いろいろ謎。。趣味カメムシ集め。
・子どもたち:わやわやハウスで、毎日わやわや遊んでいる。
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「たんけん、たんけん」
ほっぺこちゃんは わやわやハウスにいく準備をしています。
「おべんとうと、すいとうと、きがえでしょ。それからロープと、かいちゅうでんとうと、あとあれだ、ママー!」
「はいはい」ママが新聞から顔をあげて答えます。
「あのさー、あれない、あれ」ほっぺこちゃんが言います。
「あれって、なにさ」
「おり」
「おりって、動物とか入れるやつ?」ママが聞きます。
「そう、どうぶつはいれないんだけどさ、ばけものいれるの」
「ばけもの?」キッチンからパパが聞きます。
「そ。きょう、ばけものさがしにいくんだよ。だからさ、おりいるんだけど」
「ない」ママが言います。
「あーざんねん。ま、いっか」
「もし本当にばけものに会ったらどうするの。やめなさい」パパが心配そうに言いました。
「だいじょうぶだよ」ほっぺこちゃんが言いました。「もしでたら、ロープでぐるぐるまきにするんだから」
「うーん、ばけもの強いからね。そして、それ毛糸でしょうが」
「だってロープないんだもん」
「懐中電灯もいるの?」
「うん。ばけものって、あかるいときはでないから。よる くらぁ〜くなったら、これつけるの。パチッ!」
「やめときなさい」パパが言いました。「子どもは夜出歩くもんじゃありません」
「だいじょうぶだよ」ほっぺこちゃんが言いました。「にょろにょろさんもいるし、みんなでいくから」
「かわいい子には旅させよ、だよ。新聞にもそう書いてある」新聞から顔をあげずにママが言いました。
それでもパパは心配で、薬を飲んで透明になってこっそりついていくことにしました。
夕方、ほっぺこちゃんたちは ばけもの探しにでかけます。歩道橋をわたって階段を降りると、駅前広場です。デパートや、カフェや、本屋さんが並んでいます。
「ぜんぜんくらくない」
「こんなんじゃ、ばけものでないよね」
子どもたちは口をとんがらせて言います。
「これから、これから」にょろにょろさんが言いました。
「今日行くところはね、昔々そのまた昔、お城だったところでね。今は公園になってるけど、そりゃあ暗いんだから」
「ひー」ともちゃんが小さい声で言いました。「なんかこわそう」
「だいじょうぶだよ」と、ほっぺこちゃん。「ばけものでたら、けいとでぐるぐるまきにするから」
遊歩道をどんどん歩くうちにだんだん暗くなります。しばらくすると、こんもりと影を山盛りにしたようなところにでました。
「さあ、ついたよ」にょろにょろさんが言いました。
「ひー」ともちゃんが小さく声をあげました。「まさか、はいるの?」
「はいろうよ。かいちゅうでんとうあるから、だいじょうぶ」と、ほっぺこちゃん。
公園のなかは真っ暗です。風が吹くと木がゴトゴト、草がざわざわ。
「もうかえろうよー」ともちゃんが言いました。
「だいじょうぶ…じゃない、うん、かえろう」ほっぺこちゃんも言いました。
「ばけものさがしはもういいの」と、にょろにょろさん。
「いい、いい」ともちゃんと、ほっぺこちゃんが声をそろえて言いました。
それで帰ることにしました。でもほっぺこちゃんは見てしまったのです。トイレの横にたっている薄青い影のようなものを。
それはトイレの入り口からこちらを見ています。その体は半分透けています。
「ぎゃあああ!」ほっぺこちゃんが叫びました。「あ、あ、あそこにばけものが。あおいばけものが」
「どこどこ…ぎゃあああ!」
パパはほっぺこちゃんの大声をきいて、かけよりました。
「どうしたの?何があったの」
「ぎゃあー、ばけものがこっちくる」
「え、ばけものって、え、え?」
「ばけものがしゃべった!」
「パパのこと?パパだよ、パパ」
「ひぃぃっ、にげろー」子どもたちみんな公園の外へ逃げていきます。にょろにょろさんもかけだします。
やっとのことで駅前広場まできました。パパもやっと追いつきました。その頃には薬もきれて、パパの姿はくっきりと見えていました。
「あ、パパ。いまたいへんだったんだよ、あおいばけものに おいかけられてさ」ほっぺこちゃんが言います。
「だからね、それ、パパなの」
「なにいってんの」と、ほっぺこちゃん。
「このひと、ばけものかも」ともちゃんがひそひそ言います。「あんた、ほんもの?」
「本物です」パパが言いました。「さあ、もう帰りましょう」
パパが一歩近づくと、みんなが一歩下がります。
「おーい、信じてくれよ〜」
次の日ともちゃんはばけものの絵を書きました。ほっぺこちゃんのパパにそっくりでしたが、上から下まで青いクレヨンで塗られていました。
(今週の言葉)
かわいいこには旅をさせよ
我が子がかわいいなら、親の元において甘やかすようなことをせず、世の中のつらさや苦しみを経験させたほうがよいということ。
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青山誠

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