ほっぺこちゃんと、透明パパ 「け」〜けんかするほど仲がいい


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kehoppeko

■■■■■■主要人物ぷろふぃーる■■■■■■
・ほっぺこちゃん:わやわやハウスに通う、5歳の女の子。カバンの中にいれているもの、ティッシュ、人形、人形用のミルクの素、アメの包み紙、ペン数本、メモ帳、薬(折り紙をちぎったもの)
・パパ:ほっぺこちゃんのことが大好きな、ほっぺこちゃんのパパ。ときどき透明になって、わやわやハウスにこっそり通う。
・にょろにょろさん:わやわやハウスの保育者。いまのところ、いろいろ謎。。趣味カメムシ集め。
・子どもたち:わやわやハウスで、毎日わやわや遊んでいる。
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今日は日曜日。

わやわやハウスの裏の原っぱにあつまって、みんなでサッカーをしています。

子どもチームとおとなチームとに分かれて、試合が始まりました。

「こども、がんばれ。こども、がんばれ」

「おとな、がんばれ。おとな、がんばれ」

子どもチームのほうが人数はたくさんいます。でも足が早いのも、ボールを蹴るのが強いのも、おとなチームです。

「ピ、ピーッ。6対1で、おとなチームの勝ち」

ざんねん!子どもチームは負けてしまいました。

 

部屋に帰って、椅子を丸く並べて、ミーティングをすることにしました。

ふじくんは膝においた両手をぎゅっとにぎって、うつむいています。

「ざんねんだったね」にょろにょろさんがいいました。

「まけたのも、いやけどさ」ふじくんがいいました。「もっといやなのは、こどものくせに、おとなチームばっかり、おうえんするやつがいた」

「ふじくんは、こどもチームを応援してほしかったのかな」にょろにょろさんがいいました。

「あたりまえでしょ。でもさ、かなちゃんが、「おとな、がんばれ。おとな、がんばれ」って、おとなチームばっかりおうえんしてたから。それがゆるせない」

ふじくんの目には涙が浮かんでいます。

「こどもチームも、おうえんしたもん」かなちゃんがいいます。「ふじくんのいないところでしてたもん」

「おれがちかづいていったときは、「おとながんばれ」しかきこえなかった。ということは、おとなしか、おうえんしてなかったってこと」ふじくんがいいました。

「ちがうもん、ちゃんとおうえんしてたもん」かなちゃんがいいます。

「うそつき」ふじくんがいいました。

「ふじくんは、なんでそんなに、かなちゃんがおとなを応援したのが許せないわけ」にょろにょろさんが聞きました。

「こどもはこどもを、おうえんするもんでしょ」ふじくんがいいました。

にょろにょろさんは他の子にも聞いてみました。おとなと、子ども、どっちを応援してた?

「おとな。だって、おとなチームのほうが、にんずうすくなかったから」

「こども。にんずう、おおかったけど、だんだんまけてたから」

「おとな」

「おとな」

「こども」

「どっちも」

 

かなちゃんは、ふじくんに言いました。

「そんなにくやしいなら、れんしゅうしてさ、つよくなって、もういっかいやればいいじゃん」

「おとなはなっ!」ふじくんが立ち上がりました。「つよいんだよ。れんしゅうしても・・・。そんなこといわれなくても、わかってんだよ、バカ」

「だれにむかって、くち、きいてるの」かなちゃんもいいかえします。

「おまえにだよ、バカ」ふじくんが、かなちゃんの顔をひっかきました。

かなちゃんも、ふじくんの手に噛みつきました。

二人とも、痛くて、悲しくて、泣きました。

「ふじくんのバカ。ふじくんなんて、もういなくなってもいい。バカ」かなちゃんは外へ飛び出していきました。

ふじくんは膝を抱えて泣きました。

 

にょろにょろさんが、かなちゃんのそばに行きました。

「わかってるよ、おうえんしてほしかったの。でも、あたし、ちゃんと、こどももおうえんしてたもん。ふじくんのことも、おうえんしてたもん」

 

しばらくして、ほっぺこちゃんが、ふじくんのところに行きました。

「なんで、おうえんしてくれないんだよ。ともだちなのにさ。まけてたのにさ」ふじくんが泣きながらいいました。

「うん。ふじくんさ、どうしてほしい」ほっぺこちゃんが聞きました。

「ほっといてほしい」ふじくんがいいました。

ほっぺこちゃんは、かなちゃんのところに行きました。

「ふじくんは、ほっといてほしいって。かなちゃんは?」

「ほっといてほしい」かなちゃんもいいました。

それで、お弁当にすることにしました。

にょろにょろさんは、かなちゃんの顔にバンソウコウを貼りました。

それから、ふじくんの手にもバンソウコウを貼りました。

 

かなちゃんがお弁当を持って座るところを探しています。かなちゃんは、ふじくんの後ろをいったりきたり。

ふじくんは、かなちゃんに気がつくと、自分の隣をちょんちょんと指差しました。

かなちゃんは、なにも言わずに、ふじくんの隣に座りました。それから二人でお弁当を食べました。

 

ほっぺこちゃんのパパはぜんぶ見ていました。

「けんかするほど仲がいい・・・。そのとおりだけど、そうなんだけど」

「そんなに簡単なことじゃないでしょ」にょろにょろさんがいいました。

 

(今週の言葉)
けんかするほど仲がいい
けんかできるほど、遠慮のない間柄であるということ。つまり、子ども同士のけんかは興味、関心、関わりのある間柄で起こります。

 

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青山誠

青山誠

「りんごの木」保育者。保育のかたわら執筆を行う。第46回「わたしの保育~保育エッセイ・実践記録コンクール」(小学館)にて大賞を受賞。子どもに関わる人の対話と交流の場「りんごの木サタデーナイト」主催したり、保育仲間とともにwebマガジン「こどもうちゅう」を運営したり、様々な企画にも携わる。著書に『あなたも保育者になれる』(小学館)、『子どもたちのミーティング』(共著、りんごの木)、『言葉の指導法』(共著、玉川大学)など。 りんごの木 http://ringono-ki.org りんごの木サタデーナイト https://www.facebook.com/ringo.Sat.night/ こどもうちゅう http://kodomo-uchu.com