『訪問助産ステーション東京』オンライン両親外来 VOL.1
訪問助産ステーション東京は、妊娠中から産後まで、地域の開業助産師と連携して、ご家庭ごとの専属サポートを提供しています。
コロナ禍で病院の妊婦健診への家族の同行が制限されていて不安な方や、お互い忙しい御夫婦のために、妊娠中はオンラインで定期的な面談を受けられるようにしており、出産後も引き続きその助産師に自宅に訪問してもらい、育児のノウハウを学びます。
この『訪問助産ステーション東京』オンライン両親外来 では、ご夫婦で参加されるオンライン面談で、よく質問される内容に助産師の立場で回答する会話形式のお話しです。(※フィクションです)
妊娠は不安でいっぱい
助産師(以下助):初めまして。今日から担当するササキと申します。これからよろしくお願いいたします。
妊婦のパートナー(以下F):初めまして、フジイです。こっちが妻のマイです。
妊婦(以下M):よろしくお願いします。妊娠に関してはわからないことが多いので一から教えて頂けると嬉しいです。
助:お二人は今回が初めての妊娠なんですね。ご不安も多いと思います。気になることはその都度解消していきましょう。
F:有難うございます。実は妊娠自体は2回目で、去年1回流産しているので、それもあって今回はちゃんとふたりで勉強して、できることはしたいなと思っているんです。
M:前回はまだ妊娠の初期で、赤ちゃんの袋は見えたんですが、結局心拍が見えなくて。
助:そうでしたか。それは残念でしたね。なにか処置はあったんですか?
M:いえ、先生に「自然に待っていれば生理みたいに出てくるよ」って言われて、そうなりました。特に次の妊娠に影響はないだろうとも言われてて。心配でしたが今回妊娠できてホッとしました。
つわりの時期と対策
助:妊娠初期の流産の原因のほとんどは自然淘汰のような、避けられないものとも言われています。今回はその時期を過ぎてホッとしましたね。今は体調はいかがですか?
M:おかげさまで、前回はなかったつわりも経験しました。今は妊娠13週になって、先週くらいから落ち着いてきたんですが、まだ時々気持ち悪くなります。
F:ネットで調べると9週くらいまでがつわりのピークって書いてあるんですけど、どのくらい続くんですか?
助:マイさんのように12週くらいから急に楽になったという話はよく聞きます。つわりはホルモンの影響が大きいので、胎盤が完成する15~16週には自然によくなるといわれていますが、人によっては後期まで断続的に吐き気や眠気が残る人もいます。その場合、胃の圧迫など物理的な体の変化も原因になってきます。
F:眠気はあるよね!それもつわりなんですね。
M:眠くて休みの日はずっと寝てました。家事ができないのもまたストレスなんですけど…(笑)
助:「眠りづわり」なんて言ったりします。ちょうどつわりのある妊娠4~12週は妊娠初期の赤ちゃんの重要な臓器ができる時期と重なるので、赤ちゃんからの”大事にしてください”というサインだと思えば、無理をせず休むというのも大切なことですよ。
F:家事、言ってくれたらやるのに(笑)先月は結構吐いてたし、赤ちゃんに栄養が足りてるかも心配だったんですよね。
助:妊娠初期の赤ちゃんはお母さんの持っている蓄えで充分足りるくらい小さいので、赤ちゃんの栄養不足は心配しなくて大丈夫です。ただ、水分も摂れないほどだとお母さんの状態をみて点滴などの治療が必要になることもあります。
吐き気に対して何か工夫してみてよかったことはありますか?
M:食事の支度を夫に任せて、匂いがしない部屋にこもっていましたね。あとは小分けにして空腹にならないようにするといいって何かに書いてあったのでやっています。
F:よく酸っぱいものが食べたくなるとか言うじゃないですか。でも彼女はカレーをやたら食べたがって。あとカップ麺。普段食べないのにね。
助:食事の支度を任せられると助かりますね。小分けにして食べるのはいい方法です。胃酸や低血糖でも吐き気を催すようですから。寝起きにすぐ口にできるものを用意しておくのもいいですね。
意外なものを食べたくなるというのもよくあるんですよ。食べたいものを食べたいときに、というのが基本ですので、何でも食べて下さい。
生姜もつわりの軽減にいいそうなので、はちみつやレモンとドリンクにしたり、スープや汁物に入れてもいいかもしれません。
M:あ、美味しそう。やってみます。何でも食べていいってきいて安心しました。
妊娠中は夫婦で食事にも気を付けて
F:何でも食べていいといっても、妊娠中食べないほうがいい物って何かあるんですか?
助:そうですね。つわりの時期に食べたくなるものではないと思いますが、お酒などのアルコールやカフェインの入った物、つまりエナジードリンクなんかは良くないとはよく聞くと思います。
他には生ハムとか生肉類、ナチュラルチーズも、胎児に感染する恐れのある菌や寄生虫がいるので避けたほうがいいですね。サーモンや貝類も食べるならよく火が通った物にしてくださいね。
F:チーズ、食べちゃってるね。
助:チーズは加熱していれば大丈夫ですよ。国産のチーズは加熱処理した牛乳で作っているので問題ないんですが、輸入のナチュラルチーズはそのまま食べないように気を付けたいですね。
M:こないだ食べたモッツァレラチーズ、国産だったと思う。よかったね。
助:それと、食べすぎ注意のものもあります。マグロとかカジキのような食物連鎖の上位にいる大型回遊魚は、水銀など汚染物質が含まれるので注意です。
ウナギやレバーもビタミンAが多いので、週1回くらいまでにしておきたいですね。あとは昆布もヨウ素が多いので食べすぎ注意です。
でも、どれもタンパク質やミネラルなど妊娠中に必要な栄養が豊富な食材なので、覚えておいて偏らないようにしておけばいいと思います。
M:そんなにいつも食卓に上る食材ではないかな。ツナ缶とかもあんまり良くないですか?
助:ツナ缶は大丈夫です。色んな食材をバランスよく食べるのが大切ですね。
F:一緒に聴いといて良かったです。食事の準備は僕もしますし、外食とかでも気をつけてあげられますもんね。
助:ふたりで生活を整えていく姿勢、素晴らしいですね。つわりの時期は必ず終わります。お大事に過ごしてくださいね。
M、F:ありがとうございます。
☆次回の健診まで1ヶ月間が空くので、2週間後に面談のお約束をして終了しました。
まとめ
つわりの期間:妊娠4週~15、6週ごろまで
つわりの種類:吐きづわり、食べづわり、よだれづわり、眠りづわり
つわり対策の基本:食べたいときに、食べたいものを、食べたいだけ。小分け食
受診の目安:水分も取れなくなった、急激に尿が濃く、少なくなった、など
妊娠中避けるもの:アルコール、カフェイン、生肉、ナチュラルチーズ
量に注意:有機水銀(大型回遊魚類)、ビタミンA(うなぎ、レバー)、ヨウ素(昆布)
食事はふたりの生活時間を楽しむ上で大事なことですよね。妊娠するとそこに「つわり」や「注意する食べ物」という制約が加わってきます。その制約は、ふたりで知って、一緒に乗り切っていくことで、妊婦さんだけに課された「不自由」ではなく、もう立派な“両親”として、おなかに宿った小さい命への責任をわかちあう者同士の連帯意識を持って欲しいと思います。
妊婦さんには家事、特に食事の支度をするということがハードになるので、パートナーが家事を引き受けてくれるとすご~く助かります。でも、仕事をしながら家事全般は誰にとっても負担です。無理は禁物。お互いの生活のこだわりを見直して、手放せるようにしておくと子どもが生まれた後の生活も楽になるかもしれませんね。
また、夫・フジイさんの言った、「言ってくれたらやるのに」という言葉が語る、カップル間のディスコミュニケーションは妊娠・出産・育児期によく話題になります。
体が辛いとき、自分が何を欲しているのか、どうしたら楽になるのか、自分でもよくわからないことってありますよね?
自分の欲求を言葉にすることはなかなか難しいものです。
そして男性は女性ほど相手の状況を想像するのが得意ではない傾向にあります。
なので女性は「うちのパートナーは気が利かない!」とイライラするよりも、できるだけ自分の気持ちを言語化するように心がけて、パートナーはまとまっていない話でも聴く、そこからニーズを聞き取る努力を今から重ねていって欲しいと思います。
その経験は、やがてふたりの前に現れる、“言葉の通じない他者”である赤ちゃんとの生活に必ず役に立つはずですから。
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