【助産師が教える】陣痛いつ来る?と不安になる前に!


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『訪問助産ステーション東京』オンライン両親外来 VO.4

訪問助産ステーション東京は、東京の各地域にいる開業助産師が連携して、ご自宅に保健指導をお届けするサービスを提供しています。助産所は出産を扱うばかりではありません。病院で出産する人でも、妊娠中と出産後に続けて利用することで、コロナ禍で減った指導や相談を補えます。

これは、そのサービスを「オンライン両親外来」として利用し始めたご夫婦の物語です。(※フィクションです)

登場人物
助産師ササキ(以下助):訪問助産ステーション東京所属の助産師。助産師歴20年。
妊婦マイ(以下Ⅿ):初めての妊娠中。産休に入った。家族構成は二人姉妹の妹。
夫フジイ(以下F):マイの夫。前回の流産を機に妊娠出産育児は二人で、と決意。

軽い運動でお産に必要な筋力や体力をつけて

助産師(以下助):こんにちは~。今日もよろしくお願いします。体調どうですか?

F:こんにちは。今日は一緒にしっかり歩いてきました。天気も良かったので!

M:よろしくお願いしまーす。今、妊娠35週に入りました。なんか産休に入ってから急にお腹が大きくなった気がして、重いです(笑)そう、歩くのも気付くと彼より遅れてて。

助:そうですか~。歩くのはとても良いことですね。軽く汗をかくくらい毎日歩くとお産に必要な筋力や体力もつきますし、体もほぐれるのを感じると思うんですがどうですか?

M:そうですね。最近は調子が良ければ2時間くらい歩けます。最近トイレが近いので、トイレがあるお決まりのコースができてきて、寄りながら、休みながら歩いてます。確かにほぐれるのか、肩こりとか脚のむくみが楽になる気がします。何より気持ちいいです。

F:僕が荷物持ってますから!水とか持ってるとバランスが悪いとか、腕が振れないとか言うんで。

助:フジイさんさすがです(笑)マイさん、体の微妙な変化を感じられるようになっていますね。歩いているときにお腹の張りは感じますか?

M:そうですね、下の方がキューっとなるのは前より増えてきました。張るってどういう感じかわからなかったんですけど、最近歩いてると重苦しい感じがするのでわかります。

助:痛みはないですか?生理痛みたいな。

M:「痛い」ってほどではないです。それこそ生理痛までいかない、キューってなる感じ。

F:切迫早産の兆候はなさそうだってこの前の健診では言われたそうなんですが、張りがあると切迫早産の可能性がある、ってことですか?

助:35週くらいなら生理的な張りも増えますよ。確かに今の週数で痛みのある張りが頻繁に感じられるのは問題ですけど、今は弱い張りが、出産に向けて徐々に強くなっていって、37週になる頃には痛みとして感じるくらい強いものになるわけです。

M:ふ~ん、今の痛みのない張りは助走みたいなものなんですね。

F:逆にいうと37週までに痛みがある場合は病院に行った方がいいってことですか?

助:そうですね、37週以前に痛いと感じるような強い張りが1時間に何回もあって、安静にしても楽にならないとか、出血を伴うようなときは受診した方がいいですね。

F:そういうこともあるんですね。

妊娠後期のリスクも知っておこう

F:今、気を付けたほうがいいことといったら早産ですか?

助:妊娠後期の腹痛といえば考えるのが、早産ともう一つ、常位胎盤早期剥離です。これは赤ちゃんがお腹の中にいるうちに胎盤がはがれてしまう病気です。胎盤って、赤ちゃんに栄養と酸素を送っているのはご存じですよね?

F・M:はい。

助:なので胎盤は通常、赤ちゃんが産まれた後にはがれて出てくるものなんです。それが先にはがれる、ということは赤ちゃんだけでなく、血液を送っていたお母さんの命も危なくなります。これも腹痛と出血が主な症状なので、頭に置いておいて下さい。この場合は急激な腹痛で、痛みに波がなくて、お腹の硬さが治まりません。そうなったら救急車でもいいのですぐ病院に行く必要があります。

F:ええ~、怖いな。それは誰にでも起こりうるんですか?起こりやすい人、とか原因はあるんですか?

助:妊娠中に高血圧がある人や、喫煙者や多産の人のリスクが高いと言われています。あとは細菌感染や外傷でも起こるので、可能性としては誰にでも起こりえます。脅かすつもりはないんですが、いざというときにご家族も含めて知っているのといないのでは対応の速さが変わると思うのでお話しました。

M:なんか、お腹が痛くなった時に陣痛なのか胎盤がはがれたのかわかるか不安だな…。

助:陣痛との違いはわかると思いますよ。マイさんは初めてのお産ですので、数回の陣痛で動けなくなるほど強くなる、というのは普通そうそうないです。それに今現在、「張り」という子宮収縮を感じていますよね。

M:はい、最近たまに。気付いてないのがもっとあるかもしれませんが。

助:それでいいんですよ。陣痛も今ある収縮の延長なので、必ず波があって、キューっとなって治まる、を繰り返しながら大きな波になっていきます。でも、早期剥離の場合は急に激しい痛みが来てずっと治まらないという点が違います。
よくドラマとかで妊婦さんが「うっ!来た」とか言って膝を折ってうずくまるシーン、ありますよね?

F:ありますね。

助:次の場面では妊婦さん、ハアハア息荒くして脂汗かいて横たわってたりするじゃないですか。周りも「救急車!」とか言ったりして。

M:そういうイメージあります!だから外とか一人の時に陣痛来たらどうしようって…。

助:あれは陣痛ではなくて早期剥離なんじゃないかと思っちゃいます。状況的に。なのでそういう場面で救急車を呼ぶのは正しいんですね。でも普通の陣痛では救急車は呼ばないわけです。陣痛には必ず間隔があって、その間に動けるので自力で病院に行くんです。

M:え~動けるのかなぁ~。そうだ、陣痛タクシーを登録するんだった!

病院に行くタイミングは?

M:あの、基本的なことかもしれないんですけど、病院に行くタイミングってどういう時ですか?

助:はい、37週以前ではさっきお話しした急激な腹痛や出血のほかに、水っぽいものが流れたとか、胎動が感じられないようなときには受診します。でも、37週以降におりものに血が混じるようなものは、「おしるし」といって異常じゃないので、慌てなくて大丈夫です。

M:へぇ、それはどこからの出血なんですか?私?赤ちゃん?

F:え!赤ちゃんからはないでしょ!怖いよ。

助:赤ちゃんからではないです(笑)赤ちゃんを包んでいる膜と子宮の間の接着面がずれるんですね、出産間近になると。そこからにじんだ血液と粘液が混じったものです。だから、赤ちゃんが出口に向かって下がってきている証拠なんです。

F:下がってきている、といっても慌てて病院に行く必要はない、と?

助:そうなんです、下がっていても陣痛がないと産まれないので。陣痛は徐々に強くなると言いましたが、前駆陣痛から本格的な陣痛になるまでには遠のいたり弱まったりもします。定義としては「10分間隔または1時間に6回以上の規則的な収縮」とか言いますが、初産婦さんがそこで急いで病院に行っても、陣痛がなくなって帰されたりするんですよ。

M:それ、きいたことあります!実際、どのくらいになってから行くのがいいんですか?

F:彼女が産む産院は、コロナ対策で立ち合いができないので、僕は送って行ったら家に帰って待つことになりそうなんですね。となると何度も行き来はちょっとなあ、って思いますね。

助:そうですよね。直前の健診での内診所見や、産院までのアクセスにもよりますが、大体、初産婦さんは陣痛が5~6分おきになるまで家で待つと丁度いいです。もちろん鮮血の出血があったり、破水したかも?っていう時はすぐ病院に連絡ですけど。

F:その、陣痛が10分おきから5~6分おきになるまで、もちろん人にもよるでしょうけど、どのくらいかかるものなんですか?…というのも、要はその間、僕しかついてる人間がいないってことになりますよね?それがどのくらいあるのかな~なんて。

助:経過が早い人だと、本格的に痛くなってきてから1時間もしないで5分おきになっちゃう人もいますが、たびたび遠のいて何日もかかる人もいます。まぁ大体8~10時間くらいですかね。

M:うわ、そんなに…?頼りにしてるからね!逃げないでね(笑)

助:しつこいですが、ずっと痛いわけじゃないんです。そういう間隔が長い時っていうのは、まだ治まっている時間の方が長いので、重めの生理痛みたいな波を数十秒やり過ごしたら、次の波までの何分間かはまた日常生活を送れます。ご飯も食べられるし、お風呂も入れます。

F:へぇ~案外陣痛来てても普通なんですね。

妊娠後期は体も心も出産に向けた準備をしておきましょう

F:これからのおすすめの過ごし方ってありますか?

助:とにかく普通に過ごすことです。痛いときにフジイさんに腰をさすったり手を当ててもらったりするだけでも落ち着くと思いますよ。あとは掃除もいいですね。特に拭き掃除は全身運動ですし、しゃがむので骨盤が拡がりやすくなります。あとはお風呂もいいですよ。温まると陣痛が楽になるんですよ。ただ、出た後に急激に進むこともあるので、すぐ病院に行けるように準備を整えてから入って下さい。

F:腹痛とか病気の時って横になりたいじゃないですか。寝てない方がいいんですか?

助:夜間は寝て体力を温存します。でも昼も病人のように寝ているとお産が進みにくくなりますし、動いた方が痛みが紛らわされるんですよね。「動く」と「休む」のメリハリが大事です。そうやって家で過ごして、いよいよ間が短くなって動けなくなりそうになった頃が入院しどきですね~。

M:産院の先生からは「無痛もできるよ~」って言われて迷ったんですけど、色々調べて考えて、とりあえず頑張れるところまでは頑張ろうって決めて。でも病院では彼もいなくて一人だし、不安で誘惑に負けそうな気もする(笑)どうしたら乗り切れますかね?

助:薬に頼らず頑張るって決めたんですね。一人って不安ですよね。でも、ふたりで自宅で粘ってから入院したら、病院に着く頃にはもう疲れてると思うんです。それを利用して力を抜いて、陣痛の波に身を委ねられれば、半分うとうとしながらお産が進みますよ。

F:寝ている間にお産が進んだら最高じゃないですか!

助:本来そういう仕組みになっているみたいです。陣痛を起こすホルモンには「脳内麻薬」といわれるようなものも含まれていて、酩酊したようになります。ゆらゆらしながら陣痛をやり過ごす人も多いですし、産む直前まで陣痛の合間で寝る人も結構います。陣痛のピークで酔っぱらいが吐きそうな声が出てくると「進んできたな~」って思います。

M:それは吐いちゃうってことですか?

助:お産の前に吐く人もいますが、進んできたときに出るそういう声は「いきみ」というものですね。勝手にお腹に力が入っちゃうんです。そうなったら赤ちゃんの頭がだいぶ降りてきていると予測します。

F:へ~、なんか陣痛って、痛がってたら可哀想で見てられないかと思ってましたけど、そう聴くとどうなるか楽しみですね。マイ、酔っぱらうの得意だもんね。

助:そうなるには怖がらずリラックスするのが大事なんです。そのためには暗くしたり、音楽を聴いたり、落ち着く姿勢を色々試したり、遠慮せず自分の要求をスタッフに伝えてみることをおすすめします。叶わないこともあるかもしれませんが、なにかしら工夫できることがあるはずです。

M:あ、そうなんですね。痛みを薬でとることしか楽になる方法はないと思ってた。

助:人間の体ってよくできてるんですよ。「お産の痛みは忘れる」ってよくいいますよね。だから何人も産めるんです。とはいえ、自然に進まないこともあるかもしれません。その時はその時で、母子の健康を最優先に、どんな経過も受け入れる心構えでいてくださいね。

F:ほんとに、とにかくふたりが健康であることを祈って、僕は家で待ってるからね!

M:辛くなったらテレビ電話つなぐよ。でも、耐えられるうちは家で一緒に頑張ろう。

助:陣痛がきて不安だったら連絡下さって構いませんよ。産院を退院したらすぐに訪問しますから、ご報告お待ちしていますね。ご出産ぜひ楽しんでください!

 

まとめ

・早産の兆候:37週以前(36週6日まで)の出血、頻繁な子宮収縮、破水感

・常位胎盤早期剥離とは?
赤ちゃんの出産前に胎盤がはがれることをいい、急激で持続する腹痛、出血、胎動が感じにくいといった症状が起こる。急速に母子の状態が悪化することがあるのですぐに受診を(もっと知りたい人におすすめのサイト☞ https://medicalnote.jp/contents/160229-012-XP

・おしるし:出産間近の時期にみられる粘性のある血液まじりの分泌物。赤ちゃんが下がってきたときに、赤ちゃんを包んでいる膜と子宮の壁との間にズレにより生じる。

・陣痛開始とは?:1時間に6回以上または10分おきの痛みを伴う子宮収縮がある。

・産院に連絡する目安:陣痛が10分間隔から短く、強くなっているのが明らかなとき(経産婦は1時間に4回以上、15分をきる陣痛間隔になったら連絡)、破水したかも?と感じたとき。
その他、サラサラした鮮血の出血があるとき、胎動が感じられないとき、産院から特別な注意を受けている場合

・平均分娩所要時間:初産婦10~12時間、経産婦6~8時間

・陣痛を楽にするアイテム【おすすめ順】
①好物の食べ物・飲み物(お茶、水以外に糖質入りのもの)
②ペットボトルにつけるストロー
③呼吸のしやすいマスク
④カイロなどの温かグッズ(夏でも)
⑤レッグウォーマー
⑥肌触りのいいタオル
⑦抱き枕やクッション
⑧好きな音楽、香(アロマのほか、自分や夫の服や持ち物)
⑨柔らかいボール

出産は科学が発展した現代でも、予測不能で命がけです。
最近は無痛分娩が増えてきている一方で、陣痛に恐怖心を抱く人が増えてきているように感じます。
そこには、子どもを産む人の数が減っていることで、身近で色んな出産体験を話す人に出会えなくなったことも大きく関わっているのではないかと思います。

「死ぬかと思った!」と言いながらも、どこか誇らしげにその武勇伝を語る人がたくさんいた時代には、今ほど「自分は無理だ」と思う以上に、「みんななんだかんだいって乗り切っている」という感覚があったのではないでしょうか。しかも「もう絶対産まない!」と言っていた人が何回も産む…。
そこには「辛い」以上の達成感ややりがいがあるに違いありません。

少なくとも今の東京は、残念ながらそういう環境ではなくなってしまったので、この大変な状況で、「産む」という道を進んできた人が、怖がらずに出産できるなら、無痛を選んでもいいと思います。
でも、もともと出産が辛いことばかりではないようにできている、ということを知ってもらえれば、自分と赤ちゃんの体が起こす変化を敵視するのではなく、受け入れる気持ちになるのではないかと願って、この記事を書きました。

2021年5月現在、コロナ禍の制約はまだまだ続く様子ですが、医療現場に出産育児に関する「教育」まで期待してきたことのしわ寄せが、今の産み育て世帯に来てしまったと痛感しています。出産施設で育児指導まで受けられるのは日本独特の文化のようです。

まちを見渡せば「親になるための教育」を生業とする専門職である開業助産師がたくさんいます。

母になる女性ひとりひとり、そのパートナーも赤ちゃんも固有の存在です。 生活が多様化して、子どもが減っていくこれからの時代、家庭単位で指導を受ける流れになっていくのではないでしょうか。

ぜひ訪問助産ステーション東京のページから、お近くのかかりつけ助産師を探してみてください。

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たかはしたかはし
東京の西寄り生まれの助産師。訪問助産ステーション東京(旧:里帰らない人応援プロジェクト)代表。NPO法人ぱぱとままになるまえに理事。助産院・病院・産前産後ケアサロン・保健センターで働くフリーランス。異文化コミュニケーション修士。多世代交流の場づくりが趣味。 訪問助産ステーション⇒https://myjosanshi.sakura.ne.jp/tokyo/