兼業主夫放送作家の杉山ジョージです。1976年生まれ。不惑のはずが惑いまくっている40歳。服飾デザイナーの妻、アヤコとはいつの間にか結婚16年目に突入。子どもは二人。いずれも女子。
この連載では主に、中学校1年生の長女なっちゃんとの経験と、そこで得たもの、失った(?)ものなど、一般的に難しいと言われる“父と娘”の関わりを綴っていきます。父と娘だから良かったこと、父と娘だから困ったこと、特に娘を持つパパさんや、習い事を頑張るお子さんがいる方に、もしかしたら参考になるかもしれないいけど…、ウチの娘、かなり個性的なので参考にはならないかも…(苦笑)まあ、気軽にお付き合いくださいませ。
娘が行方不明になる。そんなこと想像もしたくないことだと思う。ところがなっちゃんがちょいちょい行方不明になる。中学生になった今でも。親としては本当に困ることだが、保育園で起こした行方不明事件が僕たち夫婦を変えることになった。
まずは小さな行方不明
小学校に入る前のこと。小さいころから割と運動が得意だったなっちゃんは、体を動かすことは大好き。縄跳びも跳び箱もかけっこもいつでも率先して前に出ていた。公園では、もちろんあらゆる遊具にダッシュ。まったく恐れることなく、年上の子たちに挑んでいった。
中でも意外なほど得意だったのが「登り棒」だ。通っていた保育園にはなかったのであまりやったことがなかったのだが、実家に帰ったときに立ち寄った僕の母校にあったので挑戦してみたら、まあよくその小さい体でできるな、というくらいスイスイ登り、周囲を驚かせた。きっとその反応が爽快だったのだろう。それからというもの、なっちゃんはいわゆる細くて長い棒が立っているとところ構わず登って見せるようになった。
で、そこからが行方不明につながる。
お散歩はもちろん買い物のときなどに二人で道を歩いていると、ふとした拍子に手を放すなっちゃん。しばらくは気にしないで歩いているのだが、ふと振り向くとなっちゃんがいない!曲がり角もなければ、隠れるような茂みもない。。。神隠し?誘拐?とおたおたしていると、
「パパ!」と上から声。
上から?
ふと見上げると道路標識の上になっちゃん。もちろんダメなことなので注意はしたが、当時のなっちゃんによると、あの太さがちょうどよくて登りやすいらしい。特に一方通行がいいと言っていた(笑)
ついに本当の行方不明
そんな娘なので、ちょっといなくなるくらいのことで驚くことはなくなっていた。
そんなある日、妻がいつも通り保育園に迎えに行ったときのこと。神妙な面持ちの先生が妻に伝えたのは、その日、保育園を震撼させた大事件のこと。
午後、お昼寝を終えた子どもたちはいつものように保育園の中で遊び始めた。
その日は「かくれんぼ」それ自体は特にかわったことではなかった。しばらくしておやつの時間がくる。先生たちに呼ばれてそれぞれのクラスに戻っていく子どもたち。そのとき、担任の先生が気づいた。
なっちゃんがいない。
最初のうちは先生一人で探し始めたのだが、どうにも見つからない。応援を呼んでさらに探す。でも見つからない。一人の先生がつぶやいた「保育園の外に出たんじゃないか?」この辺からざわざわしてきた。「まさか…」捜索範囲は周りの公園にまで及び保育園のスタッフ総出でなっちゃんを探し始めた、らしい。いっしょにかくれんぼをしていた子どもたちも気が気じゃなかっただろう。と、そのとき。
保育園の中から「なっちゃんがいた!」という言葉が響き渡った。
一同ホッと一安心。しかし、いったいどこにいたのか?それは先生たちが死ぬほど探したホールの中。みんなでいっぱい名前を呼んだのに?いやむしろみんなが名前を呼ぶのが怖くて出てこられなかったのか?そうではなかった。ただ、なっちゃんは隠れたままぐっすり寝ていたのだ。
そして、主夫になる
そんな話を聞いた翌日。僕は妻と一緒に保育園に迎えに行って皆さんに頭を下げた。当時の担任の先生は僕らの親くらいのベテランで、僕ら夫婦のことを事あるごとに叱ってくれる、本当の親みたいな存在だった。その先生にホールに呼ばれた僕らは正座をして話を聞いた。
「もうすぐ小学校に入るけど、そうなるとお昼寝もない。今みたいにあなたたちの都合で遅くまで起きているようじゃダメなんじゃない?」
当時は二人とも仕事が一番だったように思う。お迎えは基本的に夜8時半。平日は夕食を一緒に食べることもなかった。当時、小学校の学童保育は夜6時まで。小学校に入ったら、何かしらの対策をとらないといけなくなることは重々わかっていたが、僕らは保育園に甘えきっていたように感じる。家に帰ってきてから妻と、今後どうしていくかを話し合った。その結果、やはり自営で時間に融通が付きやすい僕の方が、早めに仕事を終わらせてなっちゃんを迎えに行き、ご飯を作ることになった。
つまり、今のような主夫生活が始まったのだ。
保育園の先生に言われた一言は今でも耳に残っている「眠って行方不明になったのは、なっちゃんの無言のSOSだと思う」子どもは言葉で全部を表すことができない。それだけでなく自分がピンチかどうかもわからないこともあると思う。あの時のなっちゃんの行方不明が本当にSOSだったかはわからないけど少なくとも僕たち夫婦の意識を変えたことは間違いなかった。
さてさて、話は戻って今。相変わらずなっちゃんは行方不明になる。特に、バレエコンクールの会場で。同じクラスの子たちが出番を終えて全員出てきてもなっちゃんは出てこない。会場にいるはずなのに。相当時間が経ってから発見すると、大体の場合、同じスクール以外の友達につかまっていたそうな。まあ、友達が多いのは悪いことではないのだが、待っている人がいるのだから、とりあえず連絡しろ―!と心の中で思っているパパなのでした。
本記事に掲載されている情報において、その正確性や有益性などを保証するものではありません。この記事の情報から行う全ての行動については、読者の責任によって行ってください。「すいっち」では、その責任を一切負うことはできません。また、記事に掲載される金額やサイトURLなどは時期によって異なる場合などがありますので、詳細な情報は必ずリンク先でご確認ください。
このライターの他の記事を読む

杉山ジョージ

最新記事 by 杉山ジョージ (全て見る)
- 保育士も保護者も絶賛!パパの思いから生まれた音楽が聞こえる仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」<PR> - 2019年8月9日
- パパはやっぱり“うんちく”がお好き!?「パパ家事サイエンス講座」レポート - 2019年3月6日
- “ツナギ”で繋げ!家族の絆! ~パパ向け家事育児アイテム「パパのツナギ」ができるまで~⑩ - 2018年4月2日