兼業主夫放送作家の杉山ジョージです。1976年生まれ。不惑のはずが惑いまくっている40歳。服飾デザイナーの妻、アヤコとはいつの間にか結婚16年目に突入。子どもは二人。いずれも女子。この連載では主に、中学校2年生の長女なっちゃんとの経験と、そこで得たもの、失った(?)ものなど、一般的に難しいと言われる“父と娘”の関わりを綴ってきましたが、最終回を迎えることとなりました。
というわけで、今回はこれまでにつづった主になっちゃんが保育園時代の出来事を、改めて今、振り返って感じていることを書きます。
作家あさのあつこさんの言葉
兼業主夫宣言をしたのは、なっちゃんが保育園の年長の時。仕事を抑えて、とはいっても基本的に毎日仕事はあったわけで、楽しかったけど、大変だと感じたことも多かった。イライラしたこともたくさんあって、なっちゃんには申し訳なかったと思うこともある。
そんな中、地域の子育て団体の講演で、「バッテリー」などで知られる小説家で児童文学作家の「あさのあつこ」さんに子育ての話を聞くこととなった。あさのさんは3人のお子さんがいる。その末っ子である長女が、まあなかなかのグレ方をしたそうだ。
「児童文学を書いているのに自分の子どもがこうなっちゃ、説得力もないわけで、本当に参った。」
そう言いながらあさのさんは笑っていた。もちろんそれは、今ではもう落ち着いていて、振り返ればいい思い出ということもあるのだろう。そして、講演の最後に僕には非常に参考になる言葉を二つもらった。一つは「嵐の風景は嵐の中でしか見えない」。大変なことも、ひとつの経験と捉えて動じない、それはそれはすごくポジティブな思考。ちょうど自分自身が大変だなーと思っていた時なので、なるほど、と思った。
そしてもう一つ。「“子育て”とはいうけど私たちは結局 “社会人”を育てている。だから最終的に社会人として大丈夫になったらそれでOKだと思う。」目から鱗だった。確かに僕はなっちゃんを子どもというよりも一人の人間として接することは心がけていた。でもそれは決して社会人を育てているという感覚ではなかった。この日をきっかけに“社会人を育てる”ってどういうことだろう、と考えた。
子育てに一つのゴールを設定した
親の手を離れて社会と接するのはいつからだろう?就職してから、という人もいると思うけど、僕は高校を卒業したタイミングだろうと思った。
今でこそ、大学の入学式などに親が出席するのは当たり前のようだが、うちの両親は当たり前のように来なかった。それはぼくだけでなく、兄二人の時も。一人で式典に出席した時に、なんだか大人になった気がした。自分の判断で動くことが格段に増えるタイミング。この時点で自分のことを考えて動き、しかも周りの人たちに対しても最低限のルールを守り、礼儀をわきまえていなければいけない。自分が出来ていたかは別として“ここだ!”と思った。
というわけで、我が家の子育てのゴールは“高校卒業”に設定された。つまり、この時点で社会人として最低限のことをできるようにしたら、あとはもう基本的に“自分で生きて行ってちょーだい”と考えたのだ。すると、子育てに向かう気持ちが驚くほど楽になった。ゴールが見えたからである。それはゴールの場所だけでなくゴールまでの距離、つまり“あと何年”ということも見えたことが大きいと思う。高校を卒業する時点を目指しているので1日とか1週間という単位での回り道なんて大したことないと思えるようになったのだ。おかげでグッと精神状態が安定したと思う。基本的に高校卒業を目指して逆算的に子育てをするようになったのだ。
限られた時間であることを自覚した
ゴールがあることには意外な効果があった。それは、今の楽しみに必ず終わりが来てしまうことも同時に知ったことだ。それまでもいろいろな人から“子育ては期間限定の楽しみだからね”とは言われていたが、明確に“あと何年で終わる”となったことで、今までよりもずっと“今が大切”であることが感じられたのだ。そうなると、ちょっと辛いときの一瞬の踏ん張りが利く。疲れているけど、遊びたいと言っているんだから30分だけでも付き合おう、とか。小さいことかもしれないけど、どうやらそれは確実に積み重なっていくものらしい。それから7年経った今になって実感している。
問題は山積みなのです
なっちゃんは今中学2年生。つまり、高校卒業まではもう5年を切っている。なのに、問題は山積みである。社会人どころか、平均的な中学生にもたどり着いていない。何せ、学校には半分も行っていないのだから。365日バレエ漬けの毎日で疲れも溜まっているいるだろう。うちら夫婦から受け継いでしまった偏頭痛持ちであることも影響しているだろう。でも、本当の理由はそこではない。まあ全部本音がわかるわけではないけど、なっちゃん本人にも確認済。まったく困ったもんだ。
残されたわずかな期間で社会人を育てるために必要なことは、たくさんある。ありすぎる。しかも、バレエで海外留学を望んでいるなっちゃんが高校卒業を待たずに社会に出る可能性だってあるわけだ。とはいえ、性格上、上から押さえつけてもちっとも変わらないタイプで“面倒”と思ってしまったら最後。徹底的に適当に流しまくるので、なっちゃんの中で何かが変わらないとダメなのだ。
とはいえ、ものすごく心配しているか?といえば、そうでもないのだ。
僕は今まで、何度もなっちゃん自身が何かをつかんでガラッと変わった瞬間もみてきたのも事実なのだ。あともう一ついえば、別に変わらなくてもいいという気持ちもある。全体的に“多分大丈夫でしょう”という感じ。
バレエをやめようが構わないし、勉強が出来なくてもいい。
どんな状況でも、それがうちの娘“なっちゃん”なのだから。
これからもパパは、それなりに心配するし、それなりにサポートもするし、それなりに叱るし、それなりに笑わせるようにするつもりでいる。
あと4年半、全力で楽しんでいこうな!
何せ、その後にはたまちゃんもいるわけで。
まだまだ先は長そうだ。
こんな超個人的なお話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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杉山ジョージ

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