編集者の酒井です。わたしが編集した『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(熊野英一著、小学館発売、以下本書)は、『嫌われる勇気』で知られるアドラー心理学を応用し、子育て中のパパのモヤモヤをロジカルに解消する本です。
前回は、「ママがいい!」と子どもに言われたときの対処法について書きましたが、本書は子育てやしつけだけでなく、夫婦関係についても多く取り上げているのが特徴です。そこで今回は、よくある夫婦関係の悩みの解決法について、本書の内容を引用しながらご紹介します。
まず、妻の気持ちに「共感ファースト」しよう
家事・育児に積極的に取り組むパパにとって、避けては通れない悩みがあります。それは、「家事や育児のことで、妻に怒られること」です。以前のすいっちの記事(「パパだって悩んでいる!!パパの家事育児のお悩みベスト5」)でも5位に取り上げられています。
家事・育児を自分なりにがんばっているつもりなのに、妻からは感謝のことばがない。そのうえ、「もっとやって」と言われるので、報われないと感じてしまう――。「こんなにがんばっているのに!」「おれだって一生懸命やってるんだよ!」と、怒りたくなることもありますよね。
アドラー心理学では、まず相手に「共感」することが大切だとしています。前回もご紹介しましたが、著者が提唱する「共感ファースト」という姿勢について、本書から引用してみましょう。
相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の心で感じてみてください。自分から魂を幽体離脱させて、相手に憑依するようなイメージですね。これが「共感」であり、「つねに、自分から」共感を示すことを「共感ファースト」といいます
そのうえで、「もっとやって」の解決法については、下記のように説明しています。
「共感」をはしょって、物理的に家事・育児の分担量を増やしても、「もっとやって」はなくならないでしょう。当たり前のことを「有って当たり前」ではなくて、「有り難いこと」ととらえ直しましょう
以上を踏まえて、妻の「もっとやって」という気持ちに共感ファーストすると、どういう気持ちが湧き上がってくるでしょうか。妻の目で見て、妻の耳で聴いて、妻の心で感じてみてください。
「妻は毎日、家族のために一生懸命がんばっていて、それでも忙しくて大変だから、夫にもっと家事をやってほしい」と思っているのかもしれませんね。そうだとすると、「こんなにがんばっているのに!」という不満は、じつはあなたも妻も同じで、お互いがお互いに「この気持ちをわかってほしい!」と思っているのかもしれません。
自分の気持ちを妻にことばで伝えよう
さて、お互いが「この気持ちをわかってほしい!」と思っているだろうことがわかりました。でも、このままでは状況は変わりませんね。そこで、シンプルでストレートな提案をします。
自分から、今の気持ちを恥ずかしがらずに、あきらめずに、素直に伝えてみてほしい
当たり前のことに感じるかもしれませんが、これが苦手な男性はけっこう多いんです。その背景には、「男は黙って」という価値観があるのかもしれません。わたしたち親世代が育った時代には、そういう男性の理想的イメージがあったのは確かです。これについて、本書ではバッサリと評しています。
ちょっとかっこいい感じもしますが、「言わずして、わたしの気持ちを察してくれ」というのは、ある意味、甘えた考えでもあります。また、ずいぶん高度な要求をするものだともいえるのではないでしょうか
「男は黙って」という価値観は、共働き共育児が当たり前となった現在では、通用しないといえるでしょう。
妻との不毛な争いから降りよう
それでは、妻の気持ちに共感を示しつつ、自分の気持ちを素直に伝えてみるとどうなるでしょうか。
妻「家事をもっとやって!」
あなた「そうか。君はおれにもっと家事をやってほしいんだね。仕事をして、子どもを迎えに行って、家事をして、毎日大変だよね」
妻「そうなの。わたし、毎日大変なの!」
あなた「おれは、おれなりに家事を一生懸命やっているんだ。だから、家事をもっとやるのは厳しいなあ」
妻「でも、わたしはあなた以上にがんばっているのよ!」
「一生懸命やっている」というあなたと、「あなた以上にがんばっている」と主張する妻。このままいくと、話し合いは平行線をたどりそうです。
口げんかの際に多いのが、相手より上に立とうとするマウンティングです。夫婦げんかでも多いと思いますが、本書では次のように諫めています。
愛し合うカップルを目ざすのであれば、夫婦に「タテの関係」や競争的な関係を持ち込むことはお勧めできません。(中略)こちらがあら捜しをすれば、かならず、相手も仕返しをしたくなるものです。これでは、夫婦に笑顔は生まれません
夫婦でマウンティングし合えば、夫婦仲は悪化する一方です。そこで本書では、次のことが大事だと言っています。
みんな、子ども(や家族)のために一生懸命がんばっていること、そのなかでも、お互いに至らない点があるかもしれないことに注目し、「どちらが上でも下でもない、対等なチームとして共感し合うこと(後略)」
妻を競争する相手ではなく、協調する相手、対等なチームのメンバーと考えましょう。もし不毛なマウンティングを繰り広げていることに気づいたら、自分からその争いをやめたほうが得策です。もし「わたしはあなた以上にがんばっているのよ!」と言われたら、「おれのほうが!」と言いたいのをグッとこらえて、次のように言うといいかもしれません。
あなた「そうだよね。いつもおれや子どものために、がんばってくれてるよね。ありがとう」
あなた「君の不満をおれも共有したいから、もっと聴かせて」
対等なチームのメンバーとすべきことは、マウンティングではなく、話し合いですよね。
では、おさらいします。
・まず妻の気持ちに共感すること(共感ファースト)
・自分の気持ちをことばで妻に伝えること
・妻とのマウンティングをやめ、対等に話し合うこと
そうすれば妻の笑顔が増え、ひいては自分の笑顔も増えることになりますので、ぜひ、トライしてみてくださいね。
では、本書で紹介しているオーストラリアの格言をみなさんにお伝えして、終わりにしたいと思います。
“Happy wife, happy life.(幸せな人生を求めるなら、まず妻を幸せにせよ)”
『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(Kindle版もあります)
https://www.amazon.co.jp/dp/4778035372
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酒井徹

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