先日、厚生労働省から「平成29年度雇用均等基本調査(速報版)が公表され、男性の育児休業取得率は5.14%と前年度比1.98%増加しました。5年連続の上昇で過去最高の数値ですが、まだまだとても低い数値ですよね。
「育児休暇を取得した男性に聞いてみた」では、男性で育児休暇を取得した方とその会社を紹介していきます。
どのようにして職場の理解を得たのか?仕事の引き継ぎは?育児休暇中はどんな生活だったのか?などなど、これから育児休暇の取得を検討している男性のためのお役にたてるコンテンツです。
さて、第五回目は、現在はフリーランスになられていますが、育児休暇取得時は、株式会社ワークスアプリケーションズに所属していた高橋俊晃様にお話しをうかがってきました。
学生時代から育児休暇取得は考えていた
斎藤:今回は、9か月の育児休暇を取得し、「育休男子.jp」というブログで男性の育児休暇取得について様々な情報を発信している高橋さんにお話しを聞いていきます。まずは、育休をとろうと思った理由から教えてください
高橋さん:育児休暇は、学生時代から取ろうと思っていました。あまりポジティブな理由ではないのですが、就活中に仕事や働くことに情熱をもって打ち込むイメージがなかったんです。今は全然違いますよ(笑)一方で、将来は「家庭的なパパになりたい」と思っていて、制度を調べたら男性も育休取得できると知ったので「1年くらい取りたい!絶対取ろう」と決めていたんです。
子どもは好きですし、家庭を大切にしたいと強く思っていたんですよね。
斎藤:そうだったんですね。それは、ご自身の育った環境がそう思うようにさせてたんでしょうかね?
高橋さん:そういわれるとそうなのかな。父は、その当時では相当、子育てにコミットした父親だったそうです。私は泣いて泣いて全然寝ない子だったそうなんですが、かなり父が寝かしつけの場面でも頑張っていたそうなんですよ。
斎藤:なるほどね。現代のパパでも夜泣きの対応しない方も多いと思いますので、貴重な存在だったでしょうね。
さて、男性の育休としては9か月という長期の休みを取られたわけですが、職場の方や奥さんの反応はいかがでしたか?
高橋さん:当時、社内ではすでにかなりの男性の育休取得者がいたので、上司も「いいね!おめでとう!」って言ってくれましたし、同僚も「おっ、いいね!」って感じでした。妻にも以前から1年くらい取れたらいいよねと話してたので、「おお、本当に取るんだ」という冷静な反応でした。
斎藤:それだけの期間の育休を取るとなるとお仕事の引継ぎなども気になりますが、当時の仕事内容から教えてもらえますでしょうか?
高橋さん:はい。私は、採用業務を行っており、主に国内の新卒採用やインターンシップの企画・運営を担当していました。大体、10人弱のチームなのですが、通年で採用活動をしているので、切れ目がなく忙しい仕事なんです。
斎藤:新卒の担当とうかがうと、1年間で仕事の山谷があるような印象でしたが、そうでもないんですね?そうすると、育休を取得するとなると仕事の引継ぎは大変だったでしょう?どのように引継ぎを行ったんですか?
高橋さん:実は、育休取得にあたって配置替えをしてもらったんですよ。育休を取得したのは2015年の7月後半からだったんですが、前年の年末に上司に育休を取ると伝え、年明けにはリソースに関して相談する時間を設けてもらったんです。
そこで、同じ採用なんですけど、中途の面接とか仕組みづくりをするチームに変えてもらいました。ですから、ボリュームのある今までの業務の引継ぎは業務時間中にふつうに行い、配置替え後は、それほど大きな引継ぎをする必要がなかったんです。
斎藤:それは凄いなぁ。育休前に配置替えまでしてもらえるなんて羨ましい環境ですね。
目論見が崩れた育休期間
斎藤:実際に育休を取っていた時は、どのような生活でしたか?
高橋さん:いやぁ、想像を超えてましたね
斎藤:えっ?そうなんですか?どんなことがあったんですか?
高橋さん:育休の期間中は、授乳以外は何でもやってました。「男子厨房に入らず」なんて言葉があるので「そうはいっても料理は奥さんが作ってるんでしょ」と言われたら癪だなと思い、料理は私が3食主担当でした。6年間一人暮らしをしていたので、家事の基本スキルはある程度はありました。
もちろん、妻も育休をとっていたので、少しは余裕があるかと思っていたんですよ。その時間を自己研鑽の時間にかけられるかと思っていたんですけどね。甘かった。。。。
斎藤:そういうことですね。一人暮らしの時も、奥さんとふたりで生活しているときも、時間のコントールがある程度できますけど、子どもとの暮らしは、そういきませんからね。なかなか予定を立てたり、計画的にまとまった時間を取ることは不可能ですよね。まして、それだけ家事にコミットしていたのであれば難しいでしょう(笑)
子どもの成長はこの目で見たい!
斎藤:育休中は、なかなか思い通りに進まないことが多かったと思いますが、育休をとってズバリ良かったことは、どんなことでしょうか?
高橋さん:「子どもの成長を近くで見たい」という気持ちが強かったので、近くにいてずっと子どもを見ていられたのはすごく良かったです。
「今日初めて寝返りしたんだよ」と妻から伝聞で聞くよりも「おっ!それ!あー!惜しい!」「おおっ遂に!」みたいにそばで見ていられた時間はすごく充実していたと感じます。あと、実務的な面でいうと、ワンオペできるレベルの家事育児スキルを身につけることもできたと思っています。
これで、例えば妻が体調崩したとしても、一人で何でもできる自信があるのは安心感に繋がりましたね。
斎藤:産まれてからは、「初めての〇〇」が続きますから、その瞬間に居合わせることができるというのは、これからのお子さんとの関係性を構築する上でも大切なことだと思いますよ。
高橋さん:そうですよね。一方で、この間、仕事のことは極力考えないようにしたり、出かけるときの身だしなみには気を付けるようにしていました。
斎藤:仕事のことはわかりますが、身だしなみとは?
高橋さん:平日日中に男性が子連れで歩いている姿は珍しいので、見た目がみすぼらしいと通報されるのではないかと思っていました。
斎藤:なるほどね(笑)今でも男性の育休取得者は少ないけど、3年前はもっと少なかったですからね。
育休から復職後の働き方は要注意!
斎藤:さて、育休から復帰した時のことをうかがいたいと思いますが、お仕事に復帰する上で不安などはありませんでしたか?
高橋さん:いやぁ、もう、やる気満々で復職しましたよ。育休取得直前に配置替えをしてもらっていましたが、復職にあたって元々の新卒採用・インターンのポジションにも戻ることができましたしね。
斎藤:おー、それは良かったですね。理想的な職場じゃないですかー。それでは、復職後の奥さんとの家事育児の役割分担はいかがでしたか?
高橋さん:それは耳が痛いところなんですよ。私が仕事したくてしょうがなかったので、朝の保育園への送りくらいしか家事育児を担っていなくて平日は妻に任せっぱなしにしてしまっていました。妻も私と同じタイミングで復職していたのに。
どうしても、仕事人間なもので、人と会って話したりするうちに、気がつくと意識が家庭の外に向いてしまっていました。そういう自分を認識しているので、フリーランスになってからは「月曜日はお迎えに行く日」というような決めごとを作るようになりました。
斎藤:なるほどね。ルールを作って時間の制限をしないと仕事どっぷりになっちゃうんですね。それって、今、独立されたことにも影響はありますか?
高橋さん:そうですね。社内にいると、色んな方からプロジェクトに参加しないかって声をかけられるんですよ。会社もチャレンジを後押しする社風でもあるし、どんどんチャレンジしたくなっちゃう。でも、家庭での時間も必要になってくるので、そのバランスを取るのが難しくなっちゃうんですよね。
会社に愛着が強い分リソースをかけていまいますし、外でもチャレンジしたいという気持ちも大きくなっていたりしたので、決心しました。それに、その方が家庭とのバランスが取りやすいかなと。
パパになったという当事者意識を持とう
斎藤:社風にも恵まれ、9か月もの育休を取られたわけですが、今のパパとしての生活の満足度に点数をつけるとしたら何点ですか?
高橋さん:そうですね。65点くらいでしょうか。この点数って100点になることはないと思います。今よりも、もっと、もっと良くしていきたいと常に思い続けると思うんですよね。子育てのステージが変わるたびに求められることも変わるし、その時々で柔軟にやっていければと思っています。実際には、以前よりは良くなってきたとは思いますが、まだまだだと感じています。
あとは、まだフリーランスになったばかりなので、仕事で実績を出すことが重要だと思っています。その実績に裏打ちされた自信を持つことで点数も変わってくるのかなぁと考えてもいます。
斎藤:仕事の充実は家庭にも影響すると思うので、フリーになったばかりの高橋さんの仕事のステージでは、実績を出すことは重要ですよね。さて、最後に、これからお子さんを持つ男性に向けてのメッセージをいただけますでしょうか?
高橋さん:子育ては一生懸命に関わり子どもの日々の変化を目の当たりにすることで計り知れない喜びがあると実感しました。それぞれの家庭の事情があるので、育休を取らないといけないとは思いませんが、取るといいことはありますよ。
あと、子育てってふたりでやっても大変なので、これを妻ひとりに担ってもらうのは無理ゲーだと思います。
男性の場合、女性と比べて親になるという上での当事者意識がどうしても低くなりがちだと思うんです。体に変化がないので致し方ない部分もあるかと思うのですが、更に、育児への関与度が少ないとゲーム差は開いていくばかりですよね。そこを埋めていくには、ある程度の初期投資として、子育てにがっつりと関わることで当事者意識を高めることが必要なんじゃないかと思います。
男性にしては長期の育休を取られた高橋さんは、仕事が大好きということもあり、復職後に仕事ができるという喜びのあまり家事育児に手がまわらず、バタバタしてしまったそうです。
まだまだ、子育ては始まったばかり。子どもの成長につれて親の生活もどんどん変化することになるでしょう。その時に、パパもママもお互いの仕事や生活を尊重しながら楽しく子育てができるといいですよね。
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斎藤 哲

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