日本の男性の育休取得率は5.14%。まだまだ、とっても低い数値ですよね。
「育児休暇を取得した男性に聞いてみた!」では、男性で育児休暇を取得した方とその会社を紹介していきます。どのようにして職場の理解を得たのか?実際に育児休暇中は、どんな生活だったのか?などなど、これから育児休暇を取得しようか検討している男性のためのお役にたてるコンテンツです。
さて、第六回目は、東京急行電鉄株式会社で広報のお仕事をされている山本浩二さんにお話しをうかがってきました。
前例がなければ、君が前例になればいい
斎藤:男性にしては長めの8か月という育児休暇を取得されたということですが、取得の理由とその時の経緯を教えていただけますか?
山本さん:はい。うちは夫婦共働きで年収もほぼ一緒なので、家事も経済的な面もすべて対等にしていて、それが普通だと思っていました。で、妻が妊娠をして産休を取ったのですが、その時「なぜ、妻は休んで、オレは仕事なんだ?」と疑問を感じるようになったんですよね。今まで、すべてが対等だったので違和感があったんです。
もちろん、男性は出産できないし、おっぱいをあげることもできませんが、それ以外は、ほぼ対等に考えていたので、育児は母親が当然やるべきという流れに向かっていることに違和感があったんです。そこで、育休は妻と同じ期間だけ取ろうと決めたんです。
7月23日に娘が産まれたのですが、出産後すぐに有給を取って育休は8月から翌年の3月末まで取得しました。そして、翌4月から私も妻も同時に復職しました。
斎藤:それにしても、8か月という長期の育児休暇を取得した男性って、当時、社内にいらっしゃったんですか?周りの反応はどのような感じだったんでしょう?
山本さん:取得したのは、3年くらい前になるのですが、当時、男性で1か月以上育休を取った人は殆どいなかったんではないでしょうか。そこで、少し後ろめたい気持ちを持ちつつも、取得する半年くらい前に、直属の上司に話したのですが、予想以上に受け入れてくれたんですよ。長期間の育休取得した男性が過去にいなかったという状況の中で、上司は「前例がないのであれば、君が前例になればいい。君が前例を作ることが後輩の役に立つ」と言ってくれたんです。更に、「もし、君が仕事のことで周りに迷惑をかけるんじゃないかと考えているのであれば、そんなことも気にしなくていいよ。それはマネージメントの仕事だから」と言って応援してくれたんです。
斎藤:めちゃくちゃ、かっこいい上司じゃないですかー。すごいですねー。では、引継ぎもスムースに行えたんですか?
山本さん:私は、広報部に所属していてテレビとか新聞にニュースを取り上げてもらえるようにリレーションを取っていくのが主な仕事になります。取材対応が多いので、1,2週間くらいのスパンで進行することが多いので、それほど引き継ぐような仕事はないんです。ただ、他のメンバーに負担はかかってしまうのは間違いないのですが、みんな温かく受け入れてくれましたね。
今まで、このインタビューに登場してもらった方の会社に共通しているのが、社風の良さと上司の理解です。東急電鉄社では、駅伝大会や家族で参加できる運動会を実施しているようで、従業員の家族をサポートする姿勢が風通しの良い社風を作っているんでしょうね。
また、後述しますが、スライド勤務や時間単位での有給を認めるなど、多様な働き方を認める制度を整えることで、育休を取得しやすい環境を作り上げているんだと思います。
家事も育児もすべて対等に
斎藤:では、育休中の生活について聞かせてください。
山本さん:はい。炊事以外はかなり家事はやれていると思いますよ。もともと、子どもが産まれる前から妻と対等にやっていたので、改めて何かが変わったということはありませんでした。
ただ、育休中だったかと思いますが、「家事は生産性を求めることはできるけど、育児は生産性を求めてはいけない」と先輩に言われたことがあるんですよね。家事は、いかに短い時間で無駄のない動きをして効率的にできるかがポイントですが、育児はその真逆で、いかに愛情を注げるかが大切だと思っています。
斎藤:ほぉ、それは良い言葉ですね。本当に互いに対等に家事・育児をすることを当たり前にやっていたって感じですね。それでは、山本さんにとって育休の期間というのは、どういう期間だったのでしょうか?
山本さん:視点が増えたということと、人の気持ちがよりわかるようになったと思っています。
普段、仕事をしている平日の時間帯に外に出歩くことがあるんですが、本当に多くのママが色んな場所をグルグルと歩き回っているんですよね。広報の前に、商業施設の担当をしていた時期もあったのですが、子育て中のお客様の視点をリアルに感じることができたなぁとと思っています。データやネットや雑誌などではわかっていたことも、経験することによって感じられることってあると思うんですよね。
プライベートの部分でも、一日家事育児をして、夫が帰ってきたときの妻側の気持ちがわかるようになりましたね(笑)。夫にとっては、どうでもいいような話でも、一日、家で子どもと一緒にいた妻からすると、自分がやっていたことを理解して欲しいという気持ちって、こういうことなのかと実感しましたね。
斎藤:実体験を通して、そのように感じ取られたということはすごく良い経験になったんでしょうね。
山本さん:そうですね。あと、育休期間中に違和感を感じたことがあるんです。
妻と子どもを連れて散歩していた時なのですが、すれ違った見ず知らずの方に、「偉いね!イクメンだね!」と言って褒められたんです。妻は褒められることはなく。家事も育児も対等にやっているので、自分だけが褒められることに違和感があったんですよね。やはり、まだまだ女性が育児をするのが当たり前だと多くの方が思っているんでしょうね。
斎藤:なるほどね。平日の日中に住宅街で男性が歩いている姿って、まだまだ見ないので、そのように声をかけてしまう人の感覚もわかりますけど、山本さんがそのように感じたということが大切ですよね。
人生を豊かにするために必要なこと
斎藤:育休中に、多くの気づきがあったようですが、復職してからの生活はいかがですか?
山本さん:わが社には、スライド勤務という制度があり早めに出社して、17時半に帰るようにしています。幸いにも会社から自宅が近いこともあって、夕方の一番忙しい時間までには帰ることができています。
斎藤:子育て家族にとっては、子どもを保育園に迎えに行ってから夕食、お風呂、睡眠という流れはかなりハードですから、早く帰れるのはいいですよね。
山本さん:そうですね。だから、自分が働くフィールドは8時間なんだと強く意識するようになり、生産性を上げるようになりましたね。
斎藤:なるほど。公私共に充実しているようですね。では、最後に、これからパパになろうという男性に対してメッセージをお願いします。
山本さん:まず、「育休」という言葉には違和感があるんです。休暇じゃないぞ、と(笑)。とにかく、育児という新しい仕事をするという機会を経験して欲しいと思っています。普段の仕事から得られるものも多いと思いますが、育児から得られるものもすごくあると思います。だからこそ、育児も頑張って欲しいですね。
私の場合は、理解のある会社だったのは非常に良かったと思うのですが、人生80年あるとすると一生は29,200日になります。私の場合は、8か月有給取ったのですが、240日ですよね。人生の1%にも満たないことになります。だから、育休を取ったとしても、全然、後ろめたいことはないし、仕事という側面でも意味のある時間になるんじゃないかと思っています。
人生を豊かにするには仕事も必要だけど、きっと、それだけではないと思っています。
斎藤:ありがとうございます。仕事は重要ではあるけど、家族を大切にすることで人生も豊かになるっていう考えはすごく素敵ですね。
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斎藤 哲

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