Mama’s Sachi代表/高橋幸恵さん
【プロフィール】
NHK出版に2003年入社。語学や医療・健康関係のテキスト、学習書、実用書などの編集を手がけ、2020年から独立。Mama’s Sachi合同会社設立。2児の母。
LINEで1日1問の「育児クイズパパ力検定」を考案。専門家の知見を気軽に楽しく得られ、安心感が拡がるようなサービスを目指している。
「育児クイズパパ力検定」では、新生児から1歳半くらいまでの育児に必要な知識をLINEで1日1問クイズ形式で配信しています。内容は、産後のママの心と体の変化や、赤ちゃんの発達、赤ちゃんのお世話の仕方のコツ、事故予防や応急処置、救命法まで全250問。そのほかにも、先輩パパからの手紙や、専門家の方への取材コラムなどのコンテンツも充実していて、気軽に楽しく育児について学べる仕組みになっています。
今回は「育児クイズパパ力検定」のサービスを提供しているMama’s Sachi代表の高橋幸恵さんに、サービスを始めたきっかけや背景にある思い、これからの目標などについて話を伺いました。
目次
「育児中孤独を感じた」という夫の声を聞き、パパのサポートの必要性を確信
Mama’s Sachi代表の高橋幸恵さんは、2019年の末まで2人の子どもを育てながら出版社に勤務をしていました。楽しく仕事をしていた高橋さんでしたが、長男を育児中の体験から“子育てのサポートをする仕事をしたい”との思いが募り、一念発起して会社を退職。
「当初は育児中のママに寄り添うカウンセリングのような仕事を考えていましたが、コロナ禍で人と対面することが難しい状況に…。それでもモチベーションを保つことができたのは、出版社で編集者として働いてきた経験でした。専門家の方とやりとりをしたりコンテンツを作ったりしてきたことをいかして、何かできることがきっとあると前向きに考えられました」
最初はママに寄り添うことを考えていましたが、パパ向けの支援の少なさに気付き、徐々にその必要性を感じたと言います。
「パパ向けのサービスってそういえばあまりないですよね。パパをサポートすることが結果としてママのサポートに繋がり、夫婦が同じスタートラインに立って育児ができる環境が生まれたらいいなと」
そして高橋さんは、夫にパパの育児の知識をサポートするための「育児クイズパパ力検定」について話してみたところ、すごくいいねととても良いリアクションがあり、背中を押してもらえたのだとか。
「夫自身が長男の育児中、目の前にいる赤ちゃんや妻をどうサポートすればいいかわからなくて、孤独や不安を感じていたそうなんです。だからこそすごく意味のあることだと思うよと。さらには“BabyTech® Award Japan(ベビーテックアワード)”というものがあると教えてもらい、アイデアを応募してみたらと勧めてもらいました」
“ベビーテックアワードに応募したところ、一次審査を通過。そこから監修者を探したりコンテンツを増やしてサービスを強化していき、晴れて2020年に特別賞を受賞。
「特別賞をいただいたことが転機になって、きちんとしたサービスを世の中に提供したいと、2020年の年末から本配信を開始しました。配信しながらもユーザーの声を聞きながらブラッシュアップを重ねる日々でしたね」
アプリではなくLINEというプラットフォームを選んだのは、サービスを開始する前にアンケートやモニタリングをお願いしたところ、アプリをダウンロードするよりもLINEの方が始めやすいとの声が多かったから。また1日1問にしたのにも理由があり、1日2問ならやらないけど1問ならやるという声が圧倒的に多かったからだそうだ。
「ユーザーの方からは自分で情報を取りに行くのはなかなかできないので、毎日少しずつ無理ないペースで育児の知識を得られることに評価をいただいています」
育児クイズパパ力検定は、全250問。事故予防や応急処置、救命法などの情報を多く扱っている背景には、知っていたら防げることもあるかもしれないという思いからだ。
「今後もユーザーの方々の声を大切にしながら、専門家の方々の協力を得て、魅力あるものにしていけるよう日々向き合っています」
喉元を過ぎても忘れられない…初めての育児の大変さが活動の原点に
「長男を出産後、新生児が小さくて儚くて足が抜けてしまうんじゃないかとおむつ替えをすることさえこわかった」と話す高橋さん。
子どもを産んで母になっても、母だからといって知識が増えるわけではなく、日々の経験を通して知識を蓄えていくもの。高橋さんにとって初めての出産と育児は、こんなこと聞いてなかったし知らなかったという気持ちの連続だったという。
「子どもを産んで育てている世の中のすべてのお母さんを尊敬する気持ちになりましたね。こんなに大変なことを皆さんされて来たんですねと」
育休を取り産休を取り、出版社で楽しく働いていたが、産後に自分が直面した問題を伝えていきたいという思いがずっと心の奥底にあった。
「今も息子達の日々の育児に奮闘していて、昔の記憶が上書きされてしまいそうにもなるんですが笑。心から信頼の置ける専門家の方々に話を伺うことで勉強になったり、過去に体験して不思議だった子どもの行動の理由がわかって今繋がったりすることなど仕事が純粋に楽しいですね。あのときの癇癪はこんな意味だったのかなとか気付きがあります」
産後は目の前にいる子どものことで手一杯。だからこそプレパパプレママから「育児クイズパパ力検定」で知識を蓄えて、夫婦で同じ目線で育児をしてほしいと願っている。
「パパができることって本当にたくさんあって、家族のキーマンと言って過言でないくらい。お母さんの一番身近にいる理解者なのだと自信を持って、育児に取り組んでもらえたら素敵ですね」
実際にサービスを利用した0歳児の育児中の方からのクロスレビューの評価で、自分が当たり前だと思って知っていたことを夫が知らないことに気付いたお母さんの声があった。
「そのお母さんから、情報量の違いの差を知って夫はやらないのではなく知らなかくてできないだけなのだと理解ができ、夫へイライラする気持ちが減ったと聞き、そういう活用のされ方もあるのかとわかり、サービスを提供して本当に良かったと思いました」
夫婦や親子の関わり合いからアプローチをして、境界線のない社会を目指す
現在「育児クイズパパ力検定」ユーザーの男女比は6:4。最近では、産院でチラシを配布していることからプレパパの参加が続々と増えている。
「“育児クイズパパ力検定”が自治体や企業の福利厚生などで使われるようになったら嬉しいです。プレパパの段階から育児の知識を得ることで、夫婦がお互いを尊重しながら育児ができる家族が増えたら素敵ですね」と高橋さん。
プレパパには、自身の子育て経験や多くの方々へのヒアリングから、頑張り過ぎなくていいと伝えたいのだとか。
「保健師さんに教えていただいたアフリカのことわざを私自身とても大事にしています。それは、“ひとりのこどもを育てるには村中みんなの力が必要”というもの。
夫婦間の情報の差を無くしていくことももちろん大事ですが、周りの人やサービスを信頼し、頼っていいと思います。自分たちだけで頑張り過ぎないで欲しい。お互いが情報を得た上で、自分たちはどういう子育てをしようかと話し合えるようになれたらいいですね」
さらに高橋さんが「育児クイズパパ力検定」に力を注ぐ大きな理由に、愛する息子たちの存在がある。
「子どもたちが大人になったときに、色々なものの境界線がない社会であるといいなと。人と人との個性や違いが認め合えるような、他者に興味を持ってコミュニケーションがきちんと取れるような」
「育児クイズパパ力検定」では子どもを主軸にした書き方がされている。そこには、今目の前にいる子どもを見てほしいというメッセージが込められているからだ。
「一番の情報源は目の前にいるお子さんであるということ。夫婦、親子のコミュニケーションがしっかりと取れた環境で育つお子さんが増えることが、将来大人になったときに他者に関心を持って違いを認め合えるようになるのだと信じています」
これからもサービスの最適化を計りながらも、高橋さんには挑戦したいことがある。それは、育児クイズパパ力検定の書籍化や、他の子育て支援事業者との協業だ。
「これからも、一人でも多くの方に私たちの言葉が届くよう、色々な方向から“育児クイズパパ力検定”を広めていきたいです。また、他社さんと協業して共に思いを広げていけたらとも思っています。私がやっていることは社会を変えることの小さな小さな一歩かもしれません。それでも、前を見て自分ができることを少しずつコツコツとやり続けていきます」
誰もが自分の存在を肯定できる世の中であって欲しいと、高橋さんの挑戦はこれからも続いていく。
育児クイズパパ力検定
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斎藤 哲

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